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ライオンとヒツジ飼い(イソップ物語より) [人を信じられないとき]

とある国に心優しい羊飼いがいました。

良く働き、親も大切にし、近所の人とも気さくに話すとても気立てのいい青年でした。

しかし、そんな羊飼いを良く思わない人の仕業で、
全く身に覚えのない罪にを被せられ、罪人として捕まってしまいました。

そして裁判の結果、死刑の判決を受けました。
この国の死刑は、密室で、身動きがとれない状態でいるところに、
空腹のライオンを放つという野蛮なものでした。

羊飼いは無罪を訴えますが、裁判官は聞き入れてはくれません。
羊飼いの両親や友だち、何人もの知人も、

彼はイイやつだから、どうか助けてやってくれ! 

と訴えますが、それでも受け入れられず、刑は執行されることになりました。

体を縛られ密室に閉じ込められた羊飼いは、なおも無罪を訴えました。
壁の向う側にいる裁判官は、全く聞き耳を持たず、近くの役人に目配りをして、
ライオンの入れてある檻の扉を開けさせました。

両親や友人たちも見守る前で、

“ガッタン”

と檻の扉は開きました。

少しの間が空いたあと、檻の中からライオンが、のっそ、のっそと出てきました。
ライオンはこの刑の為に、狭い檻の中で水だけしか与えられず、
三日間過ごしていました。
機嫌が悪く、目は獲物を逃さないとばかりに血走っています。

“ガルルルルル~”

とうなり声を上げていました。

羊飼いは、殺される! と思いギュッと目を閉じました。

“ガルルルルル~”

うなり声と共に、荒い息遣いも聞えてきます。

羊飼いは、死の恐怖におののきました。

鼓動も呼吸も早くなり、頭が恐怖で爆発しそうになりました。

───そんな時、

羊飼いは、なぜか遠い記憶を思い出しました。



それは、とても懐かしい、

            何年も前の記憶です───



羊飼いはその日、不思議な体験をしました。

「さぁ~て、今日の放牧も終わったし、一休みするか!」

と、仕事の疲れを癒すように、のんびりと背伸びをしたときでした。

“ワンワンワン”

羊飼いが飼っている牧羊犬が激しく吠えました。

羊を追い込むとき以外、大人しい犬が必死に吠えているので、
羊飼いは驚きました。

「どうしたんだい」

羊飼いは犬に近づき、地面に膝をつき、頭を撫でてやりました。
その時、犬が小刻みに震えているのが分かりました。

「どうした、何をそんなに怖がっているんだい」

犬は羊飼いの後ろの方を気にしているようで、
羊飼いの顔と、後ろを交互に落ち着きなく見て、何かを訴えているようでした。

羊飼いは気になって、自分の後ろを眺めました。

少し行ったところに白い柵があり、その向う側には草原が広がっていました。
草原の奥の方に、何やら、動くものが目に入りました。

「なんだ、あれは?」

羊飼いは、大丈夫だ、と犬の頭を撫でてから、柵の方へ歩いて行きました。

遠くに見えた動くものは、茶色い動物のようでいた。
しかもかなり大型です。

「ライオンか?」

羊飼いの鼓動は少し早くなりました。
咄嗟に、腰に差しているナイフに手を当てました。

近くにライオンがいることは知っていました。
ライオンは滅多なことが無い限り人間の側には近寄って来ません。

羊の放牧の時は安全と言われている方向に進み、
念のためにライフル銃を持って出かけていました。
しかし、一度もライオンに会ったことはありませんでした。

羊飼いにとってもライオンを見るのは初めての経験だったのです。

ライオンは草原を歩きながら羊飼いの方へやって来ます。
しかし、なにかヨロヨロとした足取りで、猛獣の雰囲気が全く感じられませんでした。

何か変だなぁ、と、羊飼いは胸のざわめきを感じながら見つめていました。

ライオンがヨロヨロとした足取りで柵の側まで来ました。

羊飼いは柵ごしにライオンの顔を見ました。

ライオンの目はとても澄んでいて、ときどき頭を下げ、
何かを困っているような仕草をしていました。

“ワンワンワン”

ライオンを見た犬が吠えました。
羊飼いは犬の方を向き、“シーッ”と人差し指を立てて大人しくさせました。
そして柵を越えライオンの近くに行きました。

少し、ドキドキしましたが、近づいて行ってもライオンはとても大人しくしていました。
羊飼いは、そっと手を伸ばし、羊の体を調べるときのようにライオンに触れました。
体をさわられてもライオンは大人しくしています。

羊飼いは足を調べてみました。
すると、前足に大きなトゲが刺さっているのを見つけました。

「これじゃ、痛くてヨロヨロとしか歩けないな」

と、羊飼いは言いながら、ライオンの足を自分の膝に乗せ、
腰に差していたナイフを手に取り、大きなトゲを取ってあげました。

「痛かったろう……、さっ、これでもう大丈夫だ」

羊飼いは優しくライオンの足を戻してやりました。

ライオンは前足を何度か足踏みしました。

そして羊飼いを見つめました。

その目はとても澄んでいて、感謝しているように羊飼いは感じました。

ライオンはサッ、と向きを変えると、草原の方へ走り去って行きました───。



───遠い昔の経験を思い出していた羊飼いは、
恐怖がだんだん小さくなって行くのを感じました。

ギュッと、固く閉じていた目をゆっくりと開け、
目の前にいるライオンを見つめました。

“ガルルルルル~”

お腹を空かせて、目は血走り荒々しくうなり声を上げています。
羊飼いは、このライオンに食べられるのだな、と思いながらも、
なぜか落ち着いた気分で見つめました。

そして、うなり声を上げているライオンに語り掛けました。

「お腹が空いているのだろう……、さぁ、お食べ……」

語りかけたその声は、とても優しく透きとおった声でした。

すると、うなり声を上げていたライオンの態度が変化していきました。

うなり声は納まり、血走っていた目も段々穏やかになっていくようでした。

やがて、ライオンは落ち着いた足取りで羊飼いに近づいてきました。

すぐ側まで来ると、澄んだ目で羊飼いを見つめました。

その時、羊飼いにも分かりました。

「やぁ、元気だったかい」

そう語り掛け、ライオンに微笑みました。

“グルグル、グルグル”
ライオンは喉を鳴らしながら、羊飼いの足に頭をスリスリとなすりつけました。

「おい、おい、くすぐったいよ」

羊飼いは笑いました。

ライオンは何度も何度も足に頭をスリスリとなすりつけたあと、
羊飼いに寄り添い、大人しく座り込んでしまいました。

予想外の展開に裁判官はあっけに取られていました。

羊飼いの両親や友人が口々に、裁判官に言いました。

「ほら、猛獣だって、彼がイイやつなことは分かっている!」
「お願い、許してあげて!」

裁判官はその声を聴いて、静かに目を瞑り、少し間を置い言いました。

「刑は執行された」

裁判官は役人に目配りをし、その場を去っていきました。

二人の役人が、寝そべっているライオンにビクビクしながら、
羊飼いを縛っている紐を解いてやりました。

羊飼いは自由になった両手で、ライオンを抱きしめて、

「ありがとう、ありがとう」

と泣きながら言いました。

ライオンも、羊飼いの頬に、何度も何度も頭をスリスリなすりつけました。

“グルグル~、グルグル~”

密室を出た羊飼いは、両親や友人の元へ帰り、
ライオンは草原の方へ、走って帰って行きました。




ものがたりはここまで[わーい(嬉しい顔)]




ここからは所感です


2017-06-29 23:23  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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